オーストラリアでの薬の内服による中絶について説明します。
まず最初にですが、スカイアーチメディカルクリニックは 女性の権利の選択を尊重します。 妊娠した女性の選択として、そのまま妊娠を継続し 出産を目指す場合、 私たちはこれを大いに祝福し順調な 妊娠継続と出産に至るように サポートを行います。一方で中絶を選ばざるを得ない女性の選択も尊重します。当院のあるクイーンズランド州では妊娠中絶は法律で認められた医療と認定されています。それにより、当院では妊娠中絶の診療を行っています。
妊娠中絶の方法としては大きく 二通りあります。 一つは薬の内服による中絶 、もう一つは 外科的手術による中絶です。
薬の内服による中絶にはいくつか条件があります。
- 妊娠 九週までに行うこと(妊娠9週を超えていたら、外科手術による中絶のみが選択可能となります)
- 子宮内にて確実に妊娠していること(血液検査と超音波検査が必要となります。超音波検査で子宮外妊娠だった場合は、外科手術による中絶の選択となります。)
- 中絶薬を内服してはいけないような疾患がないこと
また、中絶の薬には二種類あり、最初にmifepristoneを内服し、その36-48時間後にmisoprostolという薬を内服することになります。薬の内服による中絶の成功率は95-97パーセントと言われています。料金は$ 400前後。Medicareを持っている方はPBSで料金が補助され、かなり減額されます。
上記のように、薬の内服による中絶は妊娠9週までに行う必要があり、たいていの場合、女性が妊娠に気付くのは早くて妊娠5-6週でそれよりも遅い場合も多くあり、中絶の薬が完了するのが2日間と考えると、時間的に妊娠9週まで間に合わないこともあり得ますので、薬の内服による中絶を選択とした場合はすみやかに当院を受診することをお奨めします。
受診の流れとしては、
- 一回目の受診:問診でお話を聞かせてもらい血液検査と超音波検査にて子宮内にて確実に妊娠していることを確認する予定を立てる。
- 二回目の受診:数日後の二回目の受診で検査結果を確認し、子宮内にて妊娠していることが確認されたら中絶の薬が処方へと進む。そして内服を開始する。
- 三回目以降の受診:薬の内服が終わり大きな出血があった後、つまり中絶の完了が起きたと考えられた後もさらに受診を重ねて、再度血液検査と超音波検査で確実に中絶が行われ子宮内に胎児や胎盤の残像物が残っていないことを確認することが望ましい。もし、薬の内服による中絶が成功していない場合は、外科手術による中絶が必要になり専門医の病院に紹介となる。また、中絶による精神的な過労と今後の避妊についてもケアを開始する。
となります。
繰り返しになりますが、薬の内服による中絶にはそれなりの日数が必要とされますので、これを選択した方はすみやかに当院を受診することをお奨めします。
医師:長島達郎
オーストラリアでの中絶に関する法
– https://www.childrenbychoice.org.au/organisational-information/legislation/australian-abortion-law-and-practice/
薬の内服よる中絶の流れ
– https://www.health.qld.gov.au/__data/assets/pdf_file/0033/735297/f-top-summary.pdf
– https://clinicalexcellence.qld.gov.au/sites/default/files/docs/clinical-pathways/ms-2-step-clinical-pathway.pdf
薬の情報:
– https://www.tga.gov.au/sites/default/files/2024-02/auspar-ms-2step-composite-pack-240214-pi.pdf
– https://australianprescriber.tg.org.au/articles/medical-abortion-in-primary-care.html
PBSによる薬の料金情報:
– https://www.pbs.gov.au/medicine/item/10211K
薬の内服による中絶診療をMSI Australiaで行った場合の受診料
– https://www.msiaustralia.org.au/abortion-services/medical-abortion/
医療者のための薬の内服による中絶情報
– https://www1.racgp.org.au/ajgp/2020/june/medical-abortion