留学、ワーキングホリデー、仕事、駐在、結婚、移住など、さまざまな理由でオーストラリアに生活する日本人が増えています。
海外生活は新しい経験や機会をもたらす一方で、言語、文化、仕事、学校、人間関係、住居、経済面など、生活環境の大部分が変化するため、心身に大きなストレスがかかることがあります。
海外生活でストレスを感じることは珍しくありません
自分で希望して留学やワーキングホリデーを始めた場合、「自分で決めたのだから頑張らなければ」と無理をしてしまうことがあります。
また、家族や友人から「オーストラリア生活を楽しんでいる」と思われているため、つらさを相談しにくいと感じる方もいます。
しかし、海外生活では、言葉、文化、仕事、学校、人間関係、住居、食事、医療など、多くの環境変化が同時に起こります。
そのため、海外生活にストレスを感じたり、ホームシックになったりすることは珍しいことではありません。
オーストラリア生活で日本人が感じやすいストレス
1.英語によるストレス
ある程度英語を話せる方でも、毎日の生活を英語で行うことは精神的な負担になることがあります。
学校の授業、職場でのコミュニケーション、電話、銀行や保険会社との手続き、住居探し、医療機関の受診など、日本語であれば簡単にできることにも多くの集中力が必要になります。
「言いたいことを十分に伝えられない」「相手の英語を聞き取れない」といった経験が続くことで、不安や自信の低下につながることもあります。
2.ホームシック
ホームシックは、単に「日本に帰りたい」という気持ちだけではありません。
家族や友人に会いたい、日本語で気兼ねなく話したい、慣れた食事や生活環境に戻りたいなど、安心できる環境を求める気持ちも含まれます。
特に病気になった時や、仕事・学校・人間関係などで問題が起きた時には、ホームシックが強くなることがあります。
3.孤独・人間関係
海外では新しい人間関係を一から作る必要があります。
語学学校やシェアハウスなどで多くの人と接していても、親しい友人ができないことがあります。また、留学生やワーキングホリデーでは、友人の帰国や引っ越しなどによって人間関係が短期間で変化しやすいという特徴もあります。
人と接する機会があっても、孤独感を感じることはあります。
4.学校・留学によるプレッシャー
留学生の場合、
- 英語力を向上させなければならない
- 試験や課題をクリアしなければならない
- 出席率やビザが心配
- 家族に心配をかけたくない
といった複数のプレッシャーを抱えることがあります。
日本では勉強や仕事に自信があった方でも、英語環境では思うような結果を出せず、自信を失ってしまうことがあります。
5.ワーキングホリデー特有のストレス
ワーキングホリデーでは、仕事や収入、住居などが不安定になりやすいことがあります。
仕事が見つからない、勤務時間が安定しない、職場でのコミュニケーションが難しい、十分な収入を得られないといった問題がストレスにつながります。
また、「せっかく海外に来たのだから何かを達成しなければ」という自分自身へのプレッシャーが負担になる場合もあります。
6.経済的な問題・住居の問題
家賃、食費、学費、交通費など、海外生活では予想以上に生活費がかかることがあります。
仕事の減少による収入への不安、シェアハウスでのトラブル、急な引っ越し、ボンド(敷金)などの問題も大きなストレスとなる可能性があります。
7.文化の違いによるストレス
仕事の進め方、人との距離感、コミュニケーション方法、時間に対する考え方など、日本とオーストラリアではさまざまな違いがあります。
最初は新鮮に感じていた文化の違いも、長期間生活する中でストレスになることがあります。
ストレスは「心」だけでなく「身体」にも現れます
ストレスによる不調は、必ずしも「気分の落ち込み」や「不安」といった精神症状から始まるとは限りません。
本人は精神的なストレスをあまり自覚していなくても、身体症状として現れることがあります。
代表的な症状には、
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 胸部の圧迫感
- 息苦しさ
- 手の震え
- 首や肩のこり
- 腰痛
- 胃痛
- 吐き気
- 下痢・便秘
- 食欲低下
- 疲労感・倦怠感
- 不眠
- 朝起きられない
- 皮膚症状の悪化
- 円形脱毛症
- 月経周期の変化
などがあります。
ただし、これらの症状には身体的な病気が隠れている場合もあります。最初から「ストレスのせい」と自己判断せず、症状が続く場合には医療機関での評価を受けることが大切です。
精神面に現れるストレスのサイン
ストレスが強くなると、次のような変化がみられることがあります。
- 学校や仕事に行きたくない
- 朝起きることが難しくなる
- 日本に帰りたいという気持ちが強くなる
- 涙が出ることが増える
- イライラしやすくなる
- 人に会いたくなくなる
- メッセージへの返信が負担になる
- 好きだったことを楽しめなくなる
- 食欲が大きく変化する
- 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める
- 常に不安を感じる
- 集中力が低下する
- 動悸や息苦しさなどのパニック症状が起こる
- 飲酒量が増える
一時的な変化であれば自然に改善することもあります。
しかし、複数の症状が長く続き、学校、仕事、睡眠、人間関係など日常生活に影響が出ている場合には、早めに相談することをおすすめします。
「日本に帰りたい」と思ったとき
海外生活で心身の調子を崩すと、「日本に帰った方がよいのではないか」と考えることがあります。
帰国が適切な場合もありますが、オーストラリアで治療やサポートを受けながら生活を継続できる場合もあります。
体調が悪い時に一人で大きな決断を急ぐのではなく、
- 一時的に休養する
- 学校や仕事の負担を減らす
- 家族や信頼できる人に相談する
- 生活環境を見直す
- 医療機関に相談する
などの選択肢も検討してみましょう。
帰国すること、オーストラリアに残ることのどちらが「成功」「失敗」ということではありません。心身の健康を優先して判断することが大切です。
海外生活のストレスへの対処法
ストレスが強い時には、まず基本的な生活習慣を整えることが重要です。
十分な睡眠、規則的な食事、適度な運動を心がけましょう。散歩やスポーツなどで外に出ることや、友人と話すこと、日本にいる家族や友人と定期的に連絡を取ることも役立ちます。
英語環境で生活しているからといって、常に英語を使い続ける必要はありません。
日本語で話す、日本食を食べる、日本のテレビや動画を見る、音楽を聴くなど、自分がリラックスできる時間を意識的に確保することも大切です。
また、カフェインやアルコールの摂りすぎは、不安、動悸、不眠などを悪化させることがあるため注意しましょう。
GPに相談することができます
オーストラリアでは、身体的な症状だけでなく、ストレスや精神的な不調についてもGP(General Practitioner/一般開業医)に相談することができます。
「精神科を受診するほどではない」「こんなことで病院に行っていいのだろうか」と考える必要はありません。
例えば、
- 最近眠れない
- オーストラリアに来てから不安が強くなった
- 学校や仕事に行けなくなってきた
- ホームシックが強い
- 気分の落ち込みが続いている
- 動悸や息苦しさがあり、ストレスなのか身体の病気なのか分からない
といった段階でも相談できます。
GPでは、身体的な病気が隠れていないか確認するとともに、不安症、うつ状態、パニック、適応障害、不眠などについても評価します。
状態に応じて、生活環境の調整、心理療法、心理士への紹介、薬物療法などを検討することができます。
日本語で相談することのメリット
日常生活で英語を問題なく使用できる方でも、自分の感情や精神状態を英語で正確に説明することは難しい場合があります。
精神的に疲れている時には、「英語できちんと説明しなければならない」ということ自体が負担になることもあります。
日本語で話す方が安心できる場合には、日本語で医療相談を受けることも一つの選択肢です。
早めの相談が大切です
海外生活では、言葉、文化、仕事、勉強、人間関係など、多くの環境に同時に適応する必要があります。
ストレスやホームシックを感じること自体は珍しいことではありません。しかし、無理を続けることで、不眠、不安、うつ状態、パニック症状、身体症状などが強くなる場合があります。
「最近、少し自分らしくない」「以前と何か違う」と感じた段階で、早めに相談することが大切です。
頭痛、動悸、胃腸症状、不眠、疲労感など、身体症状から相談しても構いません。
「身体の病気なのか、ストレスによるものなのか分からない」という場合にも、GPでは身体面と精神面の両方から評価することができます。
海外生活で心身の不調を感じている場合には、一人で抱え込まず、GPや医療機関に相談してください。
オーストラリアで働く日本人医師:長島達郎




