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子宮頸がんのスクリーニング検査について考える: オーストラリアで実施されているHPV PCR検査法について

先進国では HPV PCR 検査が子宮頸がん検診の標準

― WHO・オーストラリア・英国・オランダに共通する科学的根拠 ―

結論(要約)

子宮頸がんの原因である高リスクHPVを直接検出できるHPV PCR(HPV DNA検査)は、
細胞診(Pap smear)より感度が高く、検診間隔を安全に延長でき、
HPVワクチン時代に最も適した検診法である。

この認識は現在、WHOをはじめ、オーストラリア、英国、オランダなどの先進国で完全に共有されています。

1️ HPV PCRは「病因(原因)」を捉える検査

子宮頸がんのほぼ100%は 持続する高リスク型HPV感染 によって発症します。

HPV PCR は

  • 高リスクHPV DNAを直接検出
  • 細胞異型が出る前の段階でリスクを把握

できるため、CIN2+/CIN3+ の検出感度は細胞診より有意に高いことが示されています。

World Health Organization(WHO) は
HPV DNA検査を子宮頸がん検診の第一選択として推奨しています。

2️ 高感度ゆえに「5年に1回」が可能

HPV PCR が陰性の場合、数年間にわたる子宮頸がんリスクは極めて低いことが分かっています。
そのため先進国では:

  • 検診間隔:5年ごと
  • 開始年齢:25~30歳以上

という 科学的に合理的な検診設計が採用されています。

3️ 細胞診は「一次検査」から「トリアージ」へ

現在の先進国モデルは共通して以下の流れです:

HPV PCR(一次検査)
→ HPV陽性の場合のみ細胞診(トリアージ)
→ リスクに応じてコルポスコピー

これにより

  • 偽陰性の減少
  • 不要な精査の削減
  • 医療資源の最適化

が実現されています。

4️ HPVワクチン時代に最適

HPVワクチン接種率が上昇すると、

  • 細胞診で異常を見つけにくくなる
  • 細胞診の効率が低下する

という課題が生じます。

HPV PCR は 低有病率集団でも有効であり、
ワクチン世代を含む将来の検診の中核と位置づけられています。

5️ 自己採取(Self-sampling)が可能

HPV PCR の大きな利点の一つが 自己採取検体への適応です。

  • 受診率向上
  • 地域格差・心理的障壁の軽減
  • 公衆衛生上のインパクトが大きい

この点は オーストラリアとオランダで特に重視されています。

国別の公式方針

WHO

  • HPV DNA検査を 子宮頸がん検診の第一選択として明確に推奨
  • 細胞診やVIAより高感度

オーストラリア

  • 2017年より 全国でHPV PCR一次検査
  • 対象:25–74歳、5年ごと
  • 自己採取を正式導入

英国(UK

  • NHS Cervical Screening Programme にて HPV一次検査
  • HPV陰性 → 5年後に再検
  • HPV陽性例のみ細胞診トリアージ

Netherlands(オランダ)

  • 2017年に世界でも最も早く全国規模でHPV PCR一次検査へ完全移行
  • 国の検診プログラムは
    RIVM(国立公衆衛生環境研究所) が管理
  • 自己採取HPV検査を正式に制度化
  • 高い受診率とコスト効率、CIN3+の早期検出で国際的に高評価

オランダは
「HPV PCR+自己採取+5年隔」モデルの完成形
として、WHOや他国の政策設計に大きな影響を与えています。

日本への示唆(まとめ)

HPV PCR は「先進的だから」ではなく、
予防効果・安全性・医療効率・将来適応性のすべてを満たすために採用されている。

WHO・オーストラリア・英国・オランダに共通するのは、
エビデンスに基づき、検診を“進化”させてきた姿勢です。

日本においても、

  • HPVワクチン政策の再構築
  • 検診精度の向上
  • 国際標準との整合性

を考えるうえで、HPV PCR中心の検診体系は不可避の議論といえます。

オーストリアで働く日本人医師:長島達郎

参考:

WHO

オーストラリア

英国

オランダ

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