性感染症の一つ、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ジェニタリウム)性感染症について紹介します。
Mycoplasma genitalium(MG)は、性行為を通じて感染する細菌で、尿道・子宮頸部・直腸などの粘膜に感染します。
無症状のことが多い一方で、放置すると慢性的な炎症や合併症を引き起こす可能性があります。
また、抗生物質に対する耐性が増加しており、近年問題となっています。
主な症状
多くの人は無症状ですが、感染部位によって以下のような症状が見られることがあります:
男性
- 尿道炎(排尿時の痛み・違和感)
- ペニスからの分泌物
- 精巣周囲の不快感
女性
- 子宮頸管炎(頸部の炎症)
- 異常なおりもの
- 下腹部痛、性交痛
- 性交後の出血
- 放置すると骨盤内炎症性疾患(PIDへ進行する可能性あり
両方の性別:直腸炎(Proctitis)
特に以下の方に多く見られます:
- 男性同性愛者(MSM)
- 受け身の肛門性交を行う人
- HIV陽性者
直腸感染の症状:
- 肛門の痛み
- 粘液状や膿のような直腸分泌物
- しぶり腹(残便感)
- 肛門からの出血
ただし、直腸感染は無症状のことも多く、検査を行わないと見逃されることがあります。
そのため、MSMや肛門性交の既往がある人では、症状がなくても定期的な直腸検体採取検査が推奨されます。
検査方法
- 核酸増幅検査(NAAT)が主に用いられます。
- 検体採取部位:
- 男性:初尿(first-pass urine)
- 女性:膣・子宮頸部検体採取
- MSMなど:直腸検体採取
治療
治療は耐性結果に基づいて段階的に行うのが推奨されます:
- 第一段階: ドキシサイクリン100mgを12時間ごとに7日間
- 第二段階(耐性別):
- マクロライド感受性あり: アジスロマイシン 1日目1g+2〜4日目500mg
- マクロライド耐性あり: モキシフロキサシン400mgを7日間
耐性検査なしの治療や経験的治療は推奨されません。
パートナーへの対応・再感染予防
- 過去6ヶ月以内の性的接触者は:
- 検査を受けることが推奨
- 感染が確認された場合は治療を完了するまで性行為を控える
- 治療後は3〜4週間後に再検査(Test of Cure)を行うことが推奨されます。
特に直腸感染や耐性例では重要です。
予防方法
- 性行為時はコンドームなどを使用することが最も効果的です。
- 以下のような方は、定期的な検査を検討してください:
- MSM(男性同性愛者)
- 性感染症にかかったパートナーとの接触があった人
- 性風俗業に従事している人
- HIV陽性者
公衆衛生上の注意点
- 抗生物質耐性の拡大により、治療が困難な例が増えています。
- 女性では、不妊症のリスクがあるため特に注意が必要です。
- 直腸感染(proctitis)は見逃されやすいため、MSMや肛門性交歴のある人では積極的な検査が望まれます。
Melbourne Sexual Health Centre (MSHC)のガイドラインによる推奨
- 無症状の人に対するルーチン検査は推奨されていません。
- 症状がある場合や、明確な感染リスクがある場合に限り検査・治療を実施
- 検査の際は、クラミジア、淋菌、HIV、梅毒などの他のSTIも同時に評価することが望ましいです。
Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ジェニタリウム)性感染症について受診希望の方はスカイアーチ メディカル クリニック ブリスベンにお気軽にご連絡ください。
医師:長島達郎 (S100 Prescriber)
参照:
Melbourne Sexual Health Centre (MSHC). Mycoplasma genitalium Treatment Guidelines.
https://www.mshc.org.au/health-professionals/treatment-guidelines/mycoplasma-genitalium-treatment-guidelines
Australian STI Management Guidelines (ASHM)
https://sti.guidelines.org.au/sexually-transmissible-infections/mycoplasma-genitalium