HPVとは?
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性別に関係なく誰でも感染する可能性のある一般的なウイルスです。HPVの一部の型は以下のような病気を引き起こすことがあります:
- 子宮頸がん
- 陰茎がん
- 肛門がん
- 頭頸部がん(口咽頭がんなど)
- 性器いぼ(尖圭コンジローマ)
HPVワクチンは、これらの中でも特に危険な型からの感染を防ぎ、複数のがんや性器いぼの予防に役立ちます。
クイーンズランド州におけるHPVワクチン接種
接種対象と無料提供
国立予防接種プログラム(NIP)により、12歳から25歳までの方は、メディケアの有無や国籍、ビザの種類に関わらず、HPVワクチンを無料で受けられます。
つまり、留学生、難民、一時滞在者なども25歳未満であれば無料で接種できます。
使用ワクチンについて
オーストラリアでは、最新のHPVワクチンであるGardasil®9(ガーダシル9)が使われています。これは9種類のHPV(6、11、16、18、31、33、45、52、58型)に対する予防効果があり、がんや性器いぼの原因となる主要な型をカバーしています。
Gardasil®9は、通常、7年生(12~13歳頃)の学生を対象とした全国の学校予防接種プログラムで接種されており、オーストラリアの多くの若いティーンエイジャーが学校でこのワクチンを受けています。
これにより、若年期からHPV関連疾患の予防が広く行われています。
Gardasil®9は日本で以前使用されていたワクチンとは異なり、安全性が十分に確立されています。
日本の患者様へのご案内
日本では、2013年6月からHPVワクチン(Gardasil®4やCervarix®)の接種が、副反応への懸念から一時中断されました。このため接種率が大幅に低下しました。
しかし、オーストラリアを含む多くの国で使われているGardasil®9は、より広範囲の型をカバーし、安全性と有効性が厳しく評価された新しいワクチンです。
世界保健機関(WHO)、オーストラリア治療用品庁(TGA)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、欧州医薬品庁(EMA)など主要な保健機関は、Gardasil®9の安全性と有効性を推奨しています。
また、日本でも新たなエビデンスに基づきワクチン接種が徐々に再開されており、一部の自治体では男性へのHPVワクチン接種を公費助成する取り組みも始まっています。
男性もHPVワクチンが必要な理由
HPVはすべての性別に影響を与えます。特に男性も含め、以下の理由から接種が推奨されています。
- 男性も以下のHPV関連がんにかかるリスクがあります:
- 陰茎がん
- 肛門がん
- 咽頭がん(口咽頭がん)
- 性器いぼも男性に発症します
- 男性同性間性交渉者(MSM)は肛門がんのリスクが高い
- 接種することでHPVの感染・伝播を減らし、パートナーやコミュニティの健康も守ります
男性の接種は自分を守るだけでなく、周囲の人々を守ることにもつながります。
接種スケジュール
- 9歳~25歳までは1回接種が推奨されています。
- 26歳以上の場合は3回接種が推奨されています。特に性交渉の多い方(性風俗で働く方やMSMの方など)は26歳以上でも接種が強く推奨されており、医師と相談のうえ接種を検討してください。
HPVワクチンの効果
効果 | 対象者 |
HPV関連がんの予防 | 全ての性別 |
性器いぼの減少 | 全ての性別 |
HPV感染・伝播の抑制 | あなたとパートナー |
肛門がん・咽頭がんの予防 | 特に男性・MSM |
コミュニティ全体の免疫力向上 | 全員 |
安全性と副反応について
Gardasil®9は多くの国の公的機関によって安全で効果的なワクチンとして認められており、厳格な試験と継続的な監視のもと使用されています。しかし、どのワクチンにも共通することですが、副作用がゼロであるとは言い切れません。一般的な副反応としては、注射部の痛み、発赤、腫れ、軽度の発熱、頭痛、倦怠感などが報告されています。まれに重篤な副反応が起こる可能性もありますが、非常に稀です。
HPVワクチンはスカイアーチ メディカル クリニック ブリスベンで受けることができます。お気軽にお問い合わせください。
参照:
オーストラリアにおけるHPVワクチン
- Cancer Council Australia
- Australian Government:
- Australian Immunisation Handbook:
Could Australia be the first country to eliminate cervical cancer?
日本におけるHPVワクチン
- 東京大学 健康サービスセンター:https://www.hc.u-tokyo.ac.jp/en/2023/09/22/hpv_vaccine/
- 日本婦人科腫瘍学会:https://jsgo.or.jp/en/patients/hpv-vaccine.html
- The Lancet Oncology:Japan resumes active recommendations of HPV vaccine after 8·5 years of suspension
CDC(Centers for Disease Control and Prevention: アメリカ疾病予防管理センター)
WHO(世界保健機関)
EMA(European Medicines Agency: 欧州医薬品庁)