本日は皮膚の感染症「蜂窩織炎(Cellulitis)」と「丹毒(Erysipelas)」について解説します。オーストラリアの特に農場などの遠隔地で働く方々に皮膚の感染症、特に蜂窩織炎(Cellulitis)と丹毒(Erysipelas)、にかかることがあり、これらはすぐに治療が必要となるので、注意が必要です。多くの日本人が農場や遠隔地での仕事に従事され、慣れない気候や環境、言葉の壁、長時間の野外作業により、身体に大きな負担がかかることがあります。それらの理由で、皮膚の状態の悪化がみられることがあり、蜂窩織炎(Cellulitis)や丹毒(Erysipelas)に罹患してしまうことがあります。
蜂窩織炎(Cellulitis)と丹毒(Erysipelas)が起きてしまうバックグラウンド
農場やリモートエリアでの作業中には以下のようなリスクがあります。
- 傷や切り傷ができやすい(果物の収穫、機械作業、草木との接触など)
- 虫刺されや水虫などを放置しがち
- 汚れた手や環境での作業による細菌感染
- 医療機関までのアクセスが困難
蜂窩織炎(Cellulitis)
蜂窩織炎は、皮膚の深い層(真皮や皮下脂肪組織)に細菌が感染することで発生する炎症性の疾患です。原因菌の多くは、A群β溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)で、軽い傷口、擦り傷、虫刺され、足の水虫などから侵入します。
症状:
- 痛みを伴う皮膚の赤みや腫れ
- 感染部位の熱感
- 発熱、悪寒、倦怠感
- リンパ節の腫れ
放置すると、感染が血液中に広がり「敗血症」と呼ばれる重症な状態に進展する恐れがあります。
丹毒(Erysipelas)
丹毒は、蜂窩織炎と似ていますが、皮膚の浅い層に急性の感染が起こる疾患です。急に発症し、赤くはっきりとした境界線のある腫れが特徴で、特に顔面や下肢に多く見られます。原因菌はほとんどがA群β溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)です。
主な症状:
- 境界がはっきりとした赤く腫れた部位
- 熱感と圧痛
- 高熱や寒気を伴うこともある
- 感染部位の皮膚がテカテカと光沢を帯びる
丹毒もまた、早期治療が極めて重要です。
蜂窩織炎や丹毒を治療せず放置すると、感染が血流に乗って全身に広がる(敗血症)危険性があり、入院が必要な重篤な状態になることもあります。
特に農場では「少し痛いけど我慢して働き続けてしまう」ことが多く、悪化してから病院に来るケースが目立ちます。
早期対応と治療
どちらの疾患も、抗生物質で治療が可能です。早めに受診し、内服や点滴での治療を受ければ、短期間で回復することが期待できます。
予防のアドバイス
- 傷ができたらすぐに洗浄し、乾燥・消毒
- 長引く虫刺されや赤みを放置しない
- 水虫や湿疹の治療をしておく
- 医療機関にアクセスできない場合は、オンライン診療(Telehealth)を活用
まとめ
前述のように、多くの日本人が農場や遠隔地での仕事のもと、慣れない気候や環境、言葉の壁、長時間の野外作業により、身体に大きな負担がかかることがあります。それらの理由で、皮膚の状態の悪化がみられることがあります。蜂窩織炎(Cellulitis)や丹毒(Erysipelas)は特に注意が必要な皮膚の感染症ですが、ちょっとした皮膚の違和感でも、無理せずご相談ください。
Skyarch Medical Clinic Brisbaneでは、日本語での対応が可能で、遠隔地にいる方でも利用できるオンライン診療(電話・ビデオ)を行っております。
日本人医師 長島達郎
参考:
- Healthdirect Australia – Cellulitis
https://www.healthdirect.gov.au/cellulitis - Queensland Health – Skin Infections
https://www.health.qld.gov.au/news-events/news/skin-infections-what-you-need-to-know - Australian Government Department of Health – Erysipelas
https://www.health.gov.au/resources/translated/cellulitis-and-erysipelas-health-information