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ブログ:妊娠初期の胎児染色体検査:First Treimster Screeing(FTS)と新型出生前診断 Non-Invasive Prenatal Testing(NIPT) について

はじめに

今回は妊娠初期の胎児染色体検査についてお話ししたいと思います。オーストラリアでは一般的にFirst Treimster Screeing(FTS)と新型出生前診断 Non-Invasive Prenatal Testing(NIPT)が検査方法として実施されています。First Treimster Screeing(FTS)は、妊娠11〜13週に実施される広く用いられている出生前スクリーニング検査です。この検査は、母体の血液検査と超音波検査の結果を組み合わせて、胎児がダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなどの染色体異常を持つリスクを評価します。確定診断を提供するものではありませんが、FTSは高リスクの妊娠を早期に特定し、さらなる検査の選択肢を考慮するための手助けとなります。メディケア(もしくはオーストラリアの民間保険BUPAやAHMなど)で部分的に補助され、12週の定期超音波検査と併せて貴重な情報を提供するため、多くの妊婦が選択しています。一方で、新型出生前診断(NIPT) は、母体の血液中に循環する胎児由来のDNAを分析して、特定の遺伝的状態を検出する非常に高精度なスクリーニング方法です。妊娠10週から実施可能で、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー、性染色体異常(例:ターナー症候群やクラインフェルター症候群)、および胎児の性別を検査できます。NIPTの拡張版では、稀な遺伝症候群や微小欠失症候群のスクリーニングも可能です。メディケアの対象外であり、伝統的なスクリーニングよりも高額ですが、より高い精度、低い偽陽性率、そして胎児へのリスクがないため、多くの妊婦が早期の安心を求めて選択しています。

First Treimster ScreeingFTS)についての情報

概要:
• 検査内容:妊娠11〜13週の間に行われる血液検査と超音波検査の組み合わせ
• 検査対象:主にダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー

メディケア補助:
• 血液検査については一部払い戻しあり
• 超音波検査は、提供者や状況によっては部分的にメディケアの対象になることがある

精度:
• ダウン症候群の検出率は90%以上、偽陽性率は約5%

FTSの制限事項:
• NIPTより精度が劣り、検出率は約90%、偽陽性率は約5%
• 診断検査ではなくスクリーニング検査であるため、陽性結果が出た場合は精密または侵襲的な追加検査が必要
• 性染色体異常や微小欠失症候群は評価対象外
• 初期の超音波では確認できない身体的・構造的異常の多くを検出できない
• 境界値や不明確な結果が出やすく、不安を招く可能性がある


Non-Invasive Prenatal Testing (NIPT)についての情報

1. 一般的なトリソミー(染色体異常)

最も一般的に検出される状態:
21トリソミー(Down症候群)

  • 最もよく見られる染色体異常
  • 知的障害、特徴的な顔つき、先天性心疾患のリスク増加と関連
  • 検出率:約99%

18トリソミー(Edwards症候群)

  • 重度の発達遅延、臓器の奇形
  • 流産や死産のリスクが高く、多くの赤ちゃんが1歳までに亡くなる
  • 検出率:97%以上

13トリソミー(Patau 症候群)

  • 重度の知的・身体的異常
  • 乳児期早期の死亡率が非常に高い
  • 検出率:90%以上

2. 性染色体異常

NIPTでは、X染色体およびY染色体に関する異常も調べることができます:
ターナー症候群(45,X:女性に見られ、低身長、不妊、心臓や腎臓の異常の可能性あり
クラインフェルター症候群(47,XXY:男性に見られ、不妊、低テストステロン、学習障害の可能性あり
トリプルX症候群(47,XXX)およびXYY症候群(47,XYY:症状は軽度または無症状であることも多いが、学習や行動面の問題が見られることも
これらの結果はトリソミーよりも精度が低く、追加の診断検査が必要になることがあります


3. 胎児の性別判定

• 妊娠10週以降、胎児の性別を高精度で判定可能
• 通常、オプションではあるが検査に含まれている
• 性連鎖遺伝疾患のリスク評価に有用


4. 稀な常染色体トリソミー(オプション)

• 一部のNIPTでは、9番・16番染色体などの稀なトリソミーを含むパネルを選択可能
• 臨床的裏付けが限られており、偽陽性や不確定結果のリスクが高い


5. 微小欠失症候群(オプション/高度NIPT

一部のNIPTでは、以下のような染色体の小さな欠失も検出可能:
22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群):心臓欠損、免疫不全、発達遅延など
• その他:1p36欠失、猫鳴き症候群(5p-)、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリ症候群など
これらはトリソミーに比べて精度が低く、偽陽性のリスクが高いため、診断のためにCVS(絨毛検査)や羊水検査などの追加検査が必要


NIPTの制限事項

診断検査ではない:NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断には絨毛検査や羊水検査などの侵襲的検査が必要です
以下の検出は不可:

  • 神経管閉鎖障害(例:二分脊椎)などのすべての先天異常
  • 単一遺伝子疾患(例:嚢胞性線維症、サラセミアなど)
  • 超音波でのみ確認できる構造異常

比較表

項目First Trimester ScreeningFTS新型出生前診断(NIPT
方法血液検査 + 超音波検査血液検査のみ
実施時期妊娠11〜13週妊娠10週以降
検査対象21・18・13トリソミー21・18・13トリソミー + 性染色体異常
精度検出率約90%、偽陽性率5%検出率約99%、偽陽性率1%未満
メディケア補助血液検査に対し一部あり補助なし

まとめ

• FTSまたはNIPTは強制的な検査ではありませんが、 妊娠初期のすべての妊婦さんに対し、FTSまたはNIPTのいずれかのスクリーニングを検討することが推奨されます。

• リスクの高い妊婦(例:高年齢、過去に染色体異常の妊娠歴がある方)や、より高い精度を希望する方には、NIPTを受けることをお奨めします。

• 費用や保険適用の制限がある場合は、FTSも十分に価値のある選択肢であり、必要に応じて後続の検査(NIPTや診断的検査)を追加することが可能です。

• 両方の検査に一長一短があります。両方受けることを選択される方も多くいます。

• いずれの検査も「スクリーニング検査」であり、陽性結果は必ず診断的検査(CVSや羊水検査)で確認する必要があります。

現在、妊娠初期でこれらの検査を受ける希望のある方は、スカイアーチ メディカル クリニック ブリスベンにお気軽にお問い合わせください。オーストラリアでは、First Trimester Screening(FTS)や新型出生前診断(NIPT)についてのご説明は、GPによる妊婦さんのための妊娠管理の一環として、通常の診察の中で行われます。これらの検査をご希望の場合やご不明な点がある場合は、診察時にご相談いただけます。また血液検査は当院に併設する4Cyte Pathologyですぐに受けることができます(なお、FTSやNIPTといった出生前検査に関して発生する費用は、すべて検査会社に対してのお支払いとなります。そのため、当院ではこれらの検査に関する費用を頂くことはなく、利益を得ることもございません)。

日本の新生児中治療室で新生児を診ることが専門だった経験を活かして、皆様の妊娠経過管理のお手伝いをスカイアーチ メディカル クリニック ブリスベンで行います。医師:長島達郎

参照:

 First Trimester Combined Screening (CFTS)

URL: https://www.racgp.org.au/clinical-resources/clinical-guidelines/key-racgp-guidelines/national-guide/preconception-and-pregnancy-care/pregnancy-care


RACGP – NIPT in clinical practice (Australian Journal of General Practice, 2019)
https://www1.racgp.org.au/getmedia/51e84ccf-ef30-4204-a85d-18c3cfe588b5/580-march-womens-health_v6.pdf.aspx

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