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淋菌感染症(淋病、Gonorrhoea)について

淋病は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae) という細菌によって起こる 性感染症(STI) のひとつです。世界的に非常に一般的な感染症であり、日本やオーストラリアでも重要な公衆衛生上の問題となっています。

感染部位は主に 性器、咽頭、直腸、まれに眼 です。特に女性や咽頭・直腸感染では 症状が出ないことが多く、気付かないまま他人に感染を広げてしまう可能性があります。

治療は通常抗菌薬で可能ですが、近年は 抗菌薬耐性 が世界的に増加しており、治療が難しくなる懸念があります。放置すると 骨盤内炎症性疾患、不妊、全身感染 などの合併症を起こすことがあります。

近年、日本でもオーストラリアでも 若い世代を中心に感染者数が増加 しており、定期的な検査・安全な性行為・早期治療がとても重要です。


症状

  • 男性(尿道): 排尿時の痛み、膿のような分泌物
  • 女性(子宮頸部): おりものの変化、性交後出血、下腹部痛(無症状も多い)
  • 直腸: 分泌物、かゆみ、痛み
  • 咽頭: ほとんど無症状
  • 目: 赤く腫れ、膿性の分泌物

当院での検査

  • 尿検査・膣/子宮頸部・咽頭・直腸スワブ(NAAT法)
  • その他の性病検査も検査可能

治療

  • 性器・直腸感染:
    セフトリアキソン 500mg 筋肉注射(IM) + アジスロマイシン 1g 経口 単回
  • 咽頭感染:
    セフトリアキソン 500mg 筋肉注射(IM) + アジスロマイシン 2g 経口 単回

セフトリアキソンは飲み薬ではなく、必ず筋肉注射で投与する必要があります。
そのため、クリニックへ来院していただき、医師または看護師が注射を行います。


治療後の注意

  • 治療開始後 7日間は性行為を控える(症状が続いている場合は症状消失まで)
  • 咽頭感染の場合は治癒確認検査(TOC) を治療2週間後に実施
  • 3か月後に再検査(再感染チェックのため)

パートナーへの対応

  • 過去2か月以内の性的パートナーに告知が必要です。は検査と治療が必要となります。

オーストラリア

  • 年間報告数の増加:2023年には 40,029件 の淋菌感染症が報告されました。これは2014年の報告数(約17,600件)から 127%増加 にあたります。
  • 人口あたり発生率:2014年の 人口10万人あたり67.9件 から、2023年には 153.9件 に上昇しました。
  • 性別の傾向:2023年の報告の約 7割(69%)は男性 であり、特に20〜39歳の若年〜中年層に多く見られます。

日本

  • 近年の増加傾向:国立感染症研究所のサーベイランスによると、2020年頃から感染報告が上昇し、特に20代の男女で顕著 です。
  • 性別の傾向:男性の報告数が女性より多い傾向ですが、女性は無症状のことが多く、潜在的な感染拡大リスクが指摘されています。
  • 2023年のピーク:2023年はここ10年で最も高い水準に達しました。
  • 2024年速報値:2024年の定点報告数は前年よりやや減少したものの、依然として高水準であり、感染拡大防止のための検査・啓発が引き続き重要です。
  • 国際比較:日本はオーストラリアに比べると全体の報告数は少ないものの、抗菌薬耐性株の存在が懸念されており、注意が必要です。

淋病について心配な方は、スカイアーチ メディカル クリニック ブリスベンにお気軽にご相談ください。

日本人医師:長島達郎


参考

  1. Australian STI Management Guidelines – Gonorrhoea
    https://sti.guidelines.org.au/sexually-transmissible-infections/gonorrhoea/
  2. Kirby Institute, UNSW Sydney. HIV, viral hepatitis and sexually transmissible infections in Australia: Annual Surveillance Report 2024
    https://kirby.unsw.edu.au/report/annual-surveillance-report-2024
  3. WHO Western Pacific Region Gonococcal Antimicrobial Surveillance Programme (GASP) Reports 2023
    https://www.who.int/westernpacific/activities/gonococcal-antimicrobial-surveillance-programme
  4. Australian Department of Health – Gonorrhoea notifications (NNDSS Data)
    https://www.health.gov.au/topics/sexually-transmissible-infections/data/gonorrhoea
  5. 国立感染症研究所(日本) – 感染症発生動向調査(淋菌感染症 定点サーベイランス)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr.html
  6. CDC (US) – Gonorrhea: Signs and Symptoms
    https://www.cdc.gov/std/gonorrhea/stdfact-gonorrhea.htm
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