子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で起こる病気で、世界中の女性の健康に大きな影響を与えています。
日本でもオーストラリアでも、HPVワクチンは子宮頸がんや尖圭コンジローマを予防する最も有効な方法の一つとして推奨されています。
しかし、日本とオーストラリアでは「接種回数」や「完了の基準」が異なります。そのため、日本でワクチンを受けた後にオーストラリアへ移住・留学した方は、自分の接種歴がオーストラリアでどのように扱われるのか不安に思うかもしれません。
ここでは特に、日本でシルガード9を接種した女性がオーストラリアに来た場合について、年齢別に整理しましたので説明します。
シルガード9とガーダシル9は同じワクチン
- シルガード9(日本での名前)と ガーダシル9(オーストラリアでの名前)は、同じ製薬会社(MSD/Merck)が製造している同じ9価HPVワクチンです。
- HPVによる 子宮頸がん・肛門がん・咽頭がん・尖圭コンジローマ の予防に使われます。
日本で15歳以上で接種を開始した場合
① 現在26歳未満の女性
- 日本では → 3回接種が推奨(0・2・6か月)。2回では未完了。
- オーストラリアでは → 1回接種で十分とされているため、すでに2回接種済みであれば、オーストラリアでは追加接種は不要。
- 結論:オーストラリアでは完了扱い。
② 現在26歳以上の女性
- 日本では → 2回接種では未完了。本来は3回必要。
- オーストラリアでは → 26歳未満の人だけが「1回で完了」とみなされる。26歳以上では、3回必要。
- 26歳以上では3回が必要な理由:
- 研究データの多くが若年者を対象としているため、26歳以上の人に対して「1回で十分」と結論づけるエビデンスがまだ不十分。
- 26歳以上ではすでにHPVに感染している可能性が高いため、免疫応答が若年者ほど安定していない可能性がある。
- そのため、安全性と効果を確実にするために、従来通りの3回接種(0・2・6か月)が推奨されています。
- よって、
- 2回で止まっている場合 → 日本基準でもオーストラリア基準でも未完了。
- 3回を完了している場合 → どちらの国でも完了。
日本で15歳未満で接種を開始した場合
- 日本では → 2回接種で完了。
- オーストラリアでも → すでに1回で十分とされるため、追加は不要。
- 年齢に関係なく、接種済みであれば完了扱い。
オーストラリアでは1回接種の理由(26歳未満の場合):
- 世界的な研究で、HPVワクチンは1回の接種でも長期的に十分な免疫と予防効果が得られることが分かりました。
- WHO(世界保健機関)も2022年に「1回接種で十分」と勧告。
- その結果、オーストラリアは2023年から 9〜25歳は1回接種で接種完了としています。
日本でシルガード9を接種した女性がオーストラリアに来た場合のHPVワクチンについては、スカイアーチ メディカル クリニック ブリスベンにお気軽にお問い合わせください。
日本人医師:長島達郎
参考
- 厚生労働省: ヒトパピローマウイルス感染症に係るワクチン接種について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/hpv/ - WHO SAGE April 2022: Evidence on HPV vaccines – single-dose schedule recommendation
https://www.who.int/news/item/11-04-2022-who-sage-recommends-single-dose-hpv-vaccine-schedule - Australian Government, Department of Health – HPV vaccination program
https://www.health.gov.au/diseases/hpv/hpv-vaccination-program - Cancer Council Australia: Cervical Cancer and HPV vaccine information
https://www.cancer.org.au/cervical-cancer/hpv-vaccine




