接触性皮膚炎:Irritant contact dermatitis(手洗いに関連した皮膚炎)について解説します。医療、レストランなどの接客業、食品サービス、清掃業などの多くの職業では、衛生管理と感染予防のために頻繁な手洗いが不可欠です。しかし、水、石けん、アルコール消毒剤、洗剤への繰り返しの曝露は、皮膚に大きな負担をかけます。その結果としてよく見られるのが、手洗いによる皮膚炎(接触性皮膚炎:Irritant contact dermatitis)です。皮膚が乾燥し、ひび割れ、赤く炎症を起こし、痛みを伴う状態となり、快適さや仕事のパフォーマンス、皮膚の健康全体に大きな影響を及ぼすことがあります。
原因
- 石けんや抗菌剤による頻繁な手洗い
- アルコールベースの手指消毒剤の使用
- 洗浄剤や食品取扱い用化学薬品への曝露
- 手洗い後に保湿を行わないこと
よくある症状
- 乾燥、ひび割れ、または鱗屑(うろこ状)
- 赤みや刺激感
- かゆみ、灼熱感、刺すような感覚
- 痛みを伴う亀裂や、重症時の水疱
リスクが高い職種
- 医療従事者
- キッチンスタッフ、シェフ
- 接客業(ホスピタリティ)、清掃員
- 食品取扱い業者、バリスタ
- アトピー性皮膚炎や敏感肌の既往がある人
- 感染対策で頻繁に手洗いをするすべての人
これらの職業では、手洗いの頻度、手袋の使用、消毒剤への繰り返しの曝露により、皮膚炎のリスクが特に高くなります。
予防のポイント
- 刺激の少ない無香料の洗浄剤を使用する
- 手洗いは熱湯ではなくぬるま湯で行う
- 手洗い後すぐに保湿剤を塗る
- 勤務前や休憩中にバリアクリームを使用する
- 洗剤を使う時は手袋を着用し、手は完全に乾かしてから着用する
- 石けんと水が利用できる場合、アルコール消毒剤の使用を控える
治療
手洗いによる皮膚炎の管理には、皮膚バリアの回復と炎症の軽減が重要です。早期の対処が、慢性化や悪化の予防につながります。
● 保湿剤(エモリエント)
- 厚めで無香料のクリームや軟膏(ローションより効果的)を使用
- 使用タイミング:
- 毎回の手洗い後
- 勤務の前後
- 就寝前
● ステロイド外用薬
- 炎症やひび割れがある場合は、中等度の強度のステロイド(例:Mometasone、Methylprednisoloneなど)が処方されることがあります。
- 使用は短期間に限り、医師の指導の下で行います。傷や感染部位には使用しないよう注意が必要です。
● 手袋の併用
- 手袋の着用時には:
- 手を完全に乾かしてから着用する
- 手袋は定期的に交換する
● 刺激物の回避
- 悪化因子の特定と回避が重要です。
● 感染時の抗生物質治療
- 赤みの増加、膿、腫れ、熱感など感染の兆候がある場合は、抗生物質の外用または内服が必要となることがあります。
● 専門医への紹介
- 適切な対処にもかかわらず改善が見られない場合や、アレルギー性接触皮膚炎の可能性がある場合には、皮膚科専門医への紹介が必要です。
皮膚炎が放置されると、慢性化や二次感染、仕事のパフォーマンス低下につながる可能性があります。早期の予防とスキンケアが長期的な皮膚の健康を守るために重要です。
お問い合わせ:
手洗いによる皮膚炎でお悩みの方、または皮膚に不安がある方は、Skyarch Medical Clinic Brisbaneまでご相談ください。
日本人医師:長島達郎
参考資料
- Australian Government Department of Health, Hand dermatitis (eczema) and occupational skin disease
https://www.health.gov.au/health-topics/occupational-health-and-safety/skin-disease-and-dermatitis - Safe Work Australia, Skin diseases
https://www.safeworkaustralia.gov.au/skin-diseases - Australian Dermatology Institute, Contact Dermatitis
https://www.australiandermatology.com.au/conditions/contact-dermatitis/ - WorkSafe Victoria, Hand dermatitis
https://www.worksafe.vic.gov.au/hand-dermatitis




